甲府銀座ビル再開発どんな感じに 不動産開発会社 常務取締役 岡本美都夫さん 町の一部に活性化も狙う|ニュース|甲府まちづくりラボラトリー

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MEDIA 2015.04.23

甲府銀座ビル再開発どんな感じに 不動産開発会社 常務取締役 岡本美都夫さん 町の一部に活性化も狙う

—甲府銀座ビルの再開発計画が公表されました。新ビルは2階から14階が家族向けマンションになりますね。入居は見込めるのでしょうか。

甲府は2006年〜07年にマンションの供給が多くあり、10年にもココリビルのマンションができました。しかし、その後、供給はほぼ止まってしまったので、需要はストックされていると考えています。06〜07年のマンション規模は1棟56戸〜125戸。これが甲府のマンションの上限値とみて、今回のマンションは124戸になっています。

—マンション建設とともに、中心市街地の活性化事業も発表しています。なぜ活性化事業を手がけることになったのでしょうか。
再開発事業には、国、県、市から補助金をいただいています。マンションの販売価格が安い地方都市では、補助金がないと事業化が厳しい面があります。その中で、行政が資金を出す以上は、町の活性化という形で貢献してもらいたいという話しがあったことがきっかけです。
私たちは1級建築士事務所から、今の不動産開発会社を作りました。単純に建物を設計して造ればいいというのではなく、建物を造ることは町の一部をつくることと思っています。いい町をつくりたいし、地域の期待にも応えたい。活性化事業にはやりがいと意義を感じています。

—活性化事業はどのようなものですか。
新ビル1階の商業施設建設と、「甲府まちづくりラボラトリー(仮称)」です。商業施設は、この地域ならではのものにしたいと考えています。地方では、古くからある食材や伝統工芸品をおしゃれにアレンジして成功している事例があります。地元に元々あるものを、洗練された形で生かせる店舗を出したい。
また、甲府に来て駅前図書館があることに驚きました。山梨は人口100万人当たりの図書館の数が日本一で古本市も多い。ならば本にからめた事業もいい。ヴァンフォーレ甲府などスポーツチームがあることも、生かすことのできる地域の資産です。いろいろなところに思いを巡らしています。
店舗の数は1〜3で、事業者は県内外から検討します。人を集められるかどうかが最も大事です。
ラボラトリーでは、近隣商店街の皆さんや、町づくりを研究している学生、若いクリエーターたちと、商業施設や広場を利用した活性化策を考えていきます。今年春から本格始動します。
テナントやプロジェクトの状況によって活性化事業の形は変わっていきます。しかし、この1物件で終わるのではなく、第2、第3の再開発の事業に発展させ、5年、10年と町全体の活性化に関わっていけたらと考えています。

—東京の不動産会社として、甲府の町はどのように見えますか。
最初は正直なところ、元気がないなと感じました。ただ、甲府駅北口は再開発が進み、官庁も建て替えられました。少しずつ、元気を取り戻しているように思い、将来に期待を持っています。魅力のあるものは町の中に点在しています。ただ、少ない。魅力的な点が線で結ばれ面になることで、にぎわいが形成されることが町です。

—目指す町のイメージはどんなものでしょうか。
大げさにいえば、東京の丸の内です。年末に甲府を歩いて思ったのは、イルミネーションなどがなくクリスマスっぽさを感じなかったこと。丸の内は外国のような路面に、装飾もあり、空間が魅力的です。歩くだけで楽しく、来ることが楽しい。新ビルも、待ち合わせの場所になるような象徴的な建物にしたいですね。

岡本美都夫
おかもと・みとお
1969年、東京生まれ。甲府銀座ビル再開発事業主3社のうちのアクロスの常務取締役。これまで15年ほど、不動産事業に関わってきた。現在、週1〜2回甲府に通い、事業主の窓口として地域住民と話し合いを重ねている。

取材を終えて
不動産のプロ 視点に驚き
取材で驚いたのは、岡本さんが自分で積極的に町を歩き回り、「おもしろいフリーペーパーを作る人がいる」「この通りにこんな店がある」などと、ご自身の見方で話されたことだ。活性化に取り込むことができそうな素材や特徴を、少しでも見つけたいのだそうだ。
甲府の中心街は「活性化」という言葉があふれている。様々な人が町を心配して、人を呼び込み交流を生み出す努力をしている。しかし、不動産のプロが考える町のにぎわいは、また違った視点のものになると思う。
私が銀座ビル近くの朝日新聞甲府総局に赴任して2年。ビルは町の真ん中にあいた大きな暗い穴のイメージだった。ここに多くの家族が住み、広い通りや広場ににぎわいが生まれるところを想像すると明るい気持ちになる。再開発の完了を楽しみにしつつ、事業主と住民の話し合いや活性化議論の行方をしっかりウォッチしていきたい。(榊原紘和)朝日新聞山梨版(2015年1月28日付)